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アジア太平洋地球変動研究ネットワーク

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APNとUNFCCCアジア太平洋地域協力センター(RCC Asia-Pacific)が海洋分野における研究・政策・実装の連携強化に向けたウェビナーを開催

2026年9月17日、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のアジア太平洋地域協力センター(RCC Asia-Pacific)とアジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)は、ウェビナー「海洋と気候変動:アジア太平洋地域における研究・政策・実装の連携強化」を開催しました。本ウェビナーでは、海洋・沿岸域に関する研究成果を、地域の気候変動政策や適応計画、具体的な対策の実施にいかに効果的に反映させるかについて議論しました。

冒頭、RCC Asia-Pacific地域代表のJulie Amoroso-Garbin氏と山崎寿之APNセンター長が開会挨拶を行いました。両氏は、海洋・沿岸域の研究について、科学的な信頼性を確保するだけでなく、研究成果を広く利用できるようにし、政策ニーズに応え、具体的な意思決定に資することの重要性を強調しました。

本ウェビナーには23か国から127名が参加し、海水温の上昇、海面上昇、海洋熱波、海岸侵食など、生態系や人々の暮らし、インフラ、沿岸地域のコミュニティに対するリスクの増大に対応するための取組強化について、地域全体で高い関心が寄せられていることが示されました。

導入:海洋に関する目標から実施へ

導入セッションでは、2026年の「海洋と気候変動に関する対話(Ocean and Climate Change Dialogue)」における主要なメッセージと、第31回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP31)に向けた展望が共有されました。

2026年の「海洋と気候変動に関する対話」で共同ファシリテーターを務めたSivendra Michael博士は、各国が定める「国が決定する貢献(NDC)」に海洋に関する優先課題が組み込まれつつあることを指摘し、その上で、実施を進めるためには、科学的知見、データ、資金、能力開発、パートナーシップの一層の強化が必要であると強調しました。

また、海洋研究や観測は、知識不足の解消、プロジェクト設計の支援、ブルーカーボンのモニタリング強化、そして各国が海洋に関する優先課題に取り組むために必要な資金や技術を特定する上で重要であると述べました。

さらに、科学や研究は政策策定のプロセスから切り離されるのではなく、海洋・気候変動・生物多様性に関する政策に反映されるべきであり、研究者、先住民や地域コミュニティ、民間企業、政策決定者によるパートナーシップが重要であると指摘しました。

COP31議長国を代表して登壇したNarelle Hill氏は、海洋が気候変動の緩和、適応、資金、公正な移行、損失と損害、科学など、気候変動対策のさまざまな分野と密接に関係していることを強調しました。海洋に関する独立した交渉分野を新たに設けるのではなく、既存の気候変動に関するプロセス全体に海洋の視点を組み込み、対策の実施や支援、制度化を強化することの重要性を示しました。

同じくCOP31議長国を代表するEmrah Soylemez氏も、各国の優先課題を知識、パートナーシップ、資金、組織的能力、技術、信頼性の高いデータと結び付けることにより、目標の設定から具体的な実施へと進む必要性を強調しました。

APN支援プロジェクトの紹介

本ウェビナーでは、地域に根ざした研究が海洋・気候変動政策にどのように貢献できるかを示す事例として、2件のAPNプロジェクトが紹介されました。本研究成果発表セッションでは、山崎APNセンター長がモデレーターを務め、気候変動、沿岸域、海洋に関するAPNの取組を紹介するとともに、地域研究、能力開発、科学と政策の連携を支援するAPNの役割について説明しました。

参加者にAPNの取組を紹介する山崎センター長

ブルーカーボン生態系と地域コミュニティの参画

香坂 玲教授とYining Wang博士は、APN支援プロジェクト「サンゴ礁三角地帯における地域利害関係者の気候緩和及び適応に向けたブルーカーボン生態系の管理に関する能力の向上 (CBA2020-05SY-Kohsaka)」の研究成果を発表しました。

発表では、食料、生計、沿岸域の保護、レクリエーション、漁業の支援など、マングローブや海草藻場がもたらす多面的な恩恵が示されました。一方で、海草藻場の恩恵については、マングローブに比べ一般の認知度が低いことも明らかになりました。

また、効果的なブルーカーボンの管理を進める上で、地域コミュニティの理解と参画が重要であることが強調されました。香坂教授は、APN支援プロジェクトを通じて構築された研究ネットワークや研究手法が、その後のインドネシアにおける研究にも引き継がれ、NDC関連をはじめとする政策プロセスに貢献していることを紹介しました。

その後のディスカッションでは、Wang博士が、地域コミュニティの参画や認識に関する地域レベルの科学的根拠を、国家戦略、ブルーカーボンの測定・報告・検証(MRV)、NDCの実施につなげる道筋を示しました。また、こうしたアプローチを他の開発途上国と共有し、それぞれの状況に応じて応用していくことへの関心を示しました。

太平洋地域における移動、土地・地域への愛着と気候変動適応

Andreas Neef教授は、APN支援プロジェクト「その場に留まるための移動:フィジーとサモアにおけるジェンダー化された気候リスクへの適応戦略としてのマイクロ・モビリティ(小規模移動)および循環移住(CRRP2023-02MY-Neef)」の研究成果を発表しました。

本研究では、沿岸地域のコミュニティが、気候変動によるリスクの増大に対して、必ずしも恒久的な移住を選択することなく、どのように対応しているかを調査しました。その結果、一時的な移動、循環的な移動、現在の居住地にとどまりながら行う適応策が、土地や集落、文化的空間への強い愛着を持つコミュニティにとって重要な戦略となり得ることが明らかになりました。

本研究では、地域コミュニティのさまざまな意識や経験が確認されましたが、そのいずれにも、住み慣れた土地への強い愛着と、そこにとどまりたいという希望が共通して見られました。こうした結果から、マイクロ・モビリティは、気候変動の影響を強く受けるコミュニティにとって実行可能な適応戦略となる可能性が示されました。そのため、本プロジェクトでは、政府や国際的な資金提供機関に対し、地域コミュニティ主導による現在の居住地での適応を支援するとともに、計画的移転は“最後の手段”として検討するよう提言しました。

Neef教授はさらに、フィジーの政府関係者が参加した地域政策ワークショップなど、研究成果を政策に関する議論へとつなげる取組を紹介しました。また、グリフィス大学がUNFCCCの大学パートナーシップ・プログラムに参加していることにより、国際的な気候変動対策のプロセスで明らかになった知識のギャップに対し、研究を通じて応えることができる新たな機会が生まれていると述べました。

パネルディスカッション

RCC Asia-PacificのJean Regulano氏が進行を務めたパネルディスカッションには、タイ気候変動・環境局の気候変動・環境研究センターに所属するAtsamon Limsakul博士、太平洋地域環境計画事務局(SPREP)のKenley Kenneth氏、UNFCCC事務局のOumalkhaire Yacin氏が登壇しました。

Limsakul博士は、海洋・気候変動に関する研究が、各国の適応計画の策定や実施にどのように活用されているかを説明しました。海面上昇、海岸侵食、海水の浸入、生態系の劣化に関する研究は、リスクマップの作成、インフラ計画、生態系を活用した適応、自然を活用した解決策(NbS)などに役立てられています。また、特にブルーカーボンに関連して、海洋研究とNDCの実施とのつながりについても紹介しました。

Kenneth氏は、太平洋地域の視点から、最大の課題は単に科学的知見の不足そのものではなく、知識と行動の間にあるギャップであると指摘しました。研究成果は、アクセスしやすく、実際の取組に活用でき、かつ、地域のニーズに合致したものである必要があり、意思決定、資金、実施と結びついていることが重要であると述べました。また、地域機関は、パートナーシップや地域プラットフォームの構築、技術的能力の強化、投資につながる仕組みづくりを通じて、こうしたギャップを埋める役割を果たすことができると説明しました。

Yacin氏は、UNFCCCの「国連気候変動大学パートナーシップ・プログラム(UN Climate Change Universities Partnership Programme)」を紹介しました。このプログラムは、UNFCCCの各種プロセスを通じて特定された知識や専門的ノウハウに関するニーズと、認定された大学や大学院生を結び付けるものです。プログラムではまず、政策決定者、実務者、地域コミュニティが特定した適応に関する課題を取り上げ、その後、研究者と連携して、特定の利用者のニーズに応じた研究成果を生み出す仕組みとなっています。

主要メッセージ

本ウェビナーの発表と議論を通じて、海洋・気候変動対策における研究・政策・実施の連携強化に向け、以下の重要な点が示されました。

  • 海洋に関する取組は分野横断的な課題であること。 海洋に関する課題は、気候変動の緩和、適応、資金、損失と損害、生物多様性、科学など、気候変動政策の幅広い分野と関連しています。そのため、海洋を独立した課題として扱うのではなく、気候変動対策のさまざまなプロセスに組み込む必要があります。
  • 地域の状況への考慮が重要であること。 生態系の恩恵、地域コミュニティの認識、人々の移動、地域への愛着、地域固有の知識に関する科学的知見は、コミュニティが実際に気候リスクをどのように経験し、対応しているかを踏まえた適応策や管理手法を特定する上で役立ちます。
  • 研究成果を政策に反映させるための明確な道筋が必要であること。 APN支援プロジェクトやタイの事例から、研究成果が国家戦略、国家適応計画(NAP)、NDCの実施、リスクマップの作成、ブルーカーボンの測定・報告・検証(MRV)など、さまざまな計画策定や実施プロセスに貢献できることが示されました。
  • 知識を生み出すだけでなく、活用することが重要であること。 SPREPが指摘したように、研究成果は利用しやすく、実践に役立つものであるとともに、意思決定、資金、具体的な取組の実施につながる必要があります。
  • 研究と政策の連携は双方向であるべきこと。 政策や実施におけるニーズは研究課題の優先順位を定める上で役立ちます。一方で、実施状況のモニタリングや評価、実施から得られた教訓は、その後の研究に反映させることができます。
  • 科学的根拠の充実だけでは十分ではないこと。 効果的な海洋・気候変動対策を進めるためには、科学的知見に加え、制度、パートナーシップ、資金、能力開発、そして知識を具体的な行動につなげる仕組みが必要です。

ウェビナーの詳細については、イベントページをご覧ください。