2026年に設立30周年を迎えたアジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)は、第27回政府間会合・科学企画グループ会合の開催期間中に、30周年を記念するセッションを開催しました。本セッションでは、研究の推進、科学的能力の強化、科学と政策の連携に向けて、アジア太平洋地域で積み重ねてきた30年にわたる協力を振り返りました。
冒頭では、運営委員会議長のDouglas Hill 博士が挨拶を行いました。Hill 博士は、研究者や政府関係者をはじめとする様々なステークホルダーをつなぐというAPNならではの役割に触れ、関係者の継続的な参画がネットワークを支えていると述べました。また、各国から寄せられる最新の意見が、それぞれの地域にとって意義のある研究や能力開発の方向性を形づくっていると説明しました。

続いて、1990年代のAPN設立の経緯から現在に至るまでの歩みを紹介する映像が上映されました。その後、長年にわたりAPNを支援してきた日本国環境省を代表して羽井佐幸宏氏が挨拶し、APNを科学的知見に基づく意思決定を支える信頼あるプラットフォームであると評価しました。また、多様な国々からなるアジア太平洋地域において、率直な意見交換を促す開かれた雰囲気についても言及しました。
30周年記念セッションの中心となったパネルディスカッションでは、科学企画グループの招聘専門家であるAilikun教授が司会を務めました。パネリストとして、アジア工科大学のSangam Shrestha教授及びJoyashree Roy教授、トリブバン大学のDhiraj Pradhananga博士、さらに南アジア環境フォーラムのDipayan Dey博士が登壇し、APNとの関わりが自身のキャリア、研究へのアプローチ、地域におけるパートナーシップにどのような影響を及ぼしたかを振り返りました。
Shrestha教授は、自身が以前に主導したAPNプロジェクトを振り返り、研究成果を活用する人々とともに研究を設計する意義に加え、プロジェクト管理能力の習得や、その後の研究活動を支える地域ネットワークの構築がもたらす長期的な価値を強調しました。また、後に自身が主導した統合研究プロジェクトの成果として発表された論文が、IPCC第6次評価報告書に引用されたことを紹介しました。
Roy教授は、経済学と気候科学、水文学を統合した経験が、その後、IPCCで学際的な活動に取り組む上での基礎となったと振り返りました。また、こうした経験を通じて、現場から得られた知見を政策提言につなげる力を培ったと述べました。
Pradhananga博士は、2008年に参加した研究提案書作成トレーニングワークショップが、その後のプロジェクト獲得につながる転機となったと説明しました。また、その後のAPNでの研究活動を通じて、雪氷圏科学に関する国連の作業部会を含む国際的なネットワークでリーダーシップを発揮する機会が広がったと語りました。
Dey博士は、自身の所属組織が初めて主導したAPNプロジェクトについて、研究機関としての信頼を確立する上で重要な成果となったと振り返りました。また、市民社会組織が、科学研究を地域社会での実践につなげられることを示した点にも言及しました。
パネリストの振り返りからは、研究を具体的な行動につなげていく上で、確かな科学的根拠に基づき、分野や国境を越えて協働すること、関係者が意義ある形で参画すること、そして政策決定者や地域社会の優先課題を踏まえてコミュニケーションを図ることの重要性が浮き彫りになりました。こうしたパネリストの経験を受けて、Ailikun教授は、APNは単に研究資金を提供するだけではなく、協働を重視するプロジェクトを支援することで、互いに協力し支え合う科学者のコミュニティの形成にもつながっていると指摘しました。

セッションではこのほか、アジア工科大学、南太平洋大学、北太平洋海洋科学機関から、APNの30周年を祝う言葉が届けられました。それぞれのメッセージでは、継続的なパートナーシップと知識交流、次世代への支援、そして地域が共有する課題に対する革新的な解決策の重要性が強調されました。最後に、APNで最も長く活動しているメンバーであるSubramaniam Moten氏が、1992年から現在までの自身の経験を交えながら、APNの30年以上にわたる歩みを語りました。
30周年記念セッションは、APNを形づくってきた人々とパートナーシップを称え、公正で強靱かつ持続可能なアジア太平洋地域の実現に向けて、その重要性を改めて示す機械となりました。





