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アジア太平洋地球変動研究ネットワーク

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国際シンポジウム「ネイチャーポジティブの実現と地域循環に向けて~世界から地方から、異なる視点を一つに~」開催報告

2026年1月30日、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)は、兵庫県丹波地域環境パートナーシップ会議シリ丹バレー推進協議会等とともに、国際シンポジウム「ネイチャーポジティブの実現と地域循環に向けて ― 世界から地方から、異なる視点を一つに」を開催しました。
丹波の森公苑ホール(兵庫県丹波市)にて日英同時通訳付きで実施された本シンポジウムには、会場参加101名とオンライン視聴(見逃し配信含む)401回を合わせ、国内外から延べ502名が参加しました。

■ 開会挨拶・施策説明
開会にあたり、山崎寿之APNセンター長が挨拶を行い、ネイチャーポジティブの国際的意義と日本における取組の動向に言及しました。APNがアジア太平洋地域22か国の政府間ネットワークとして、科学と政策を繋ぎ、共同研究や人材育成を通じて環境分野の国際協力を推進してきた実績を紹介。本シンポジウムが、グローバルな目標とローカルな実践を結ぶ新たな連携の契機となることへの期待を述べました。


続いて、糟谷浩行丹波県民局長が、豊かな自然や伝統文化を有する丹波地域の魅力を紹介しました。「丹波の森づくり」の理念がネイチャーポジティブの考え方と合致するものであると述べ、本シンポジウムが世界と地域を繋ぎ、未来を築く新たな一歩となることへの展望を示しました。


また、相浦輝之兵庫県環境部自然鳥獣共生課長が、「生物多様性ひょうご戦略」(2025年3月改定)について説明しました。30by30(2030年までに陸域・海域の30%を保全)の推進や特定外来生物対策、さらには行政・県民・団体が一体となった「多様な主体の連携」による保全活動の重要性を強調しました。


■ 特別講演

「草の根からグローバルな目標へ:ベトナムにおける循環型・地域密着型のランドスケープを通じたネイチャーポジティブの推進」
ホー・ゴック・ソン教授(ベトナム・タイグエン農林大学)

ネイチャーポジティブとは、生態系の復元や生物多様性の拡充、ランドスケープ(景観)の再生であると定義し、この実現のためには、森林・農場・水・集落が繋がる「ランドスケープ」規模での循環型アプローチが重要であると強調しました。ベトナム北部でのミミズの養殖やバイオ炭を用いた循環型農業を例に、先住民・地域住民の知識を科学と統合し、コミュニティ主導で進める「自然を活用した解決策(NbS)」の具体的事例を紹介しました。


■ 基調講演

「丹波地域におけるネイチャーポジティブの実現に向けて―課題と展望―」
清野未恵子 准教授(神戸大学 人間発達環境学研究科)

丹波地域が持つ豊かな生態系サービスの一方で、獣害や担い手不足といった複合的な課題に直面している現状を指摘。ネイチャーポジティブを「守る」から「増やす」への転換と定義し、30by30目標の達成には、民間等が管理する土地を対象とするOECM(自然共生サイト)の登録拡大が鍵となると述べました。その推進に不可欠なモニタリングについては、丹波地域に蓄積された市民団体・学校・研究機関等による生きもの調査のネットワークが、強力な人材基盤になるとの展望を示しました。


■ 事例発表①

「地域循環の過去と未来~温故知新:知恵の継承と未来へ向けての活動~」
髙橋隆治 理事長(特定非営利活動法人バイオマス丹波篠山)

里山の恵みを生かす暮らしと「先人の知恵」をネイチャーポジティブの原点と位置づけました。地域住民による間伐材等の利用を支援するとともに、支払いを地域通貨で行うことで地域経済の活性化を図る「木の駅プロジェクト」を紹介。木質ペレット製造や林福連携などの循環型の取組と、森林環境教育を通じた人材育成により、低炭素社会の実装を目指すと述べました。


■ 事例発表②

「森林と廃校を資源に変える経営 ― 地域を動かすCSVモデルの実践」
足立龍男 代表(FOREST GROUP)

世界的な森林減少に対し、日本では森林資源が飽和状態にありながら活用が進んでいない現状を指摘。「地域の木を使うことこそが森を守る」と日本独自の保全のあり方を説きました。さらに、森林と廃校という、既存の枠組みでは無価値化しつつある資源を掛け合わせる新機軸として、旧神楽小学校を活用した「FOREST DOOR」の事例を紹介。社会価値と経済価値を同時に創出するCSV(共通価値の創造)型経営の可能性を提示しました。


■ パネルディスカッション

  • パネリスト: ホー教授、清野准教授、髙橋理事長、足立代表
  • コーディネーター: 小嶋公史 所長代理(IGES関西研究センター

ホー教授は国際枠組みを地域の文脈に即して柔軟に適用し、住民と解決策を共同デザインすること(Co-design)の重要性を強調。清野准教授からは成果を可視化する技術革新や地域固有の呼び名・文化を尊重した保全の提案がなされました。
また、実務の視点からは、髙橋理事長が先人の知恵を次世代へ繋ぐ人材育成の必要性を説きました。足立代表は、地域の木材利用によって森林整備を促し、不健全な飽和状態にある山を再生させるとともに、経済効果を通じて地域を潤す循環の重要性を語りました。
国際的な目標を地域の具体的行動へと接続し、持続可能なものにするためのアプローチについて、それぞれの視点から今後の展望を探る貴重な時間となりました。


■ ネイチャーポジティブ宣言

シンポジウムの締めくくりとして、糟谷丹波県民局長およびリンダ・アン・スティーブンソンAPNプログラムディレクターがそれぞれ「ネイチャーポジティブ宣言」を行い、持続可能な未来の実現に向けた決意を表明して閉会しました。

 

APNは、今後も兵庫県、関係機関、研究機関などと連携しながら、県民の皆さまが地球規模の環境問題についての認識を深められる取組を進めてまいります。

当日のプログラム  日本語  英語

講演資料は下記のリンクからご覧ください。

特別講演
「草の根からグローバルな目標へ:ベトナムにおける循環型・地域密着型のランドスケープを通じたネイチャーポジティブの推進」
(講演資料:日本語資料(PDF)英語資料(PDF)

ホー・ゴック・ソン教授
(ベトナム・タイグエン農林大学)
基調講演
「丹波地域におけるネイチャーポジティブの実現に向けて―課題と展望―」
(講演資料:日本語資料(PDF)英語資料(PDF)

清野未恵子 准教授
(神戸大学 人間発達環境学研究科)
事例発表①
「地域循環の過去と未来~温故知新:知恵の継承と未来へ向けての活動~」
(講演資料:日本語資料(PDF)英語資料(PDF)

髙橋隆治 理事長
(特定非営利活動法人バイオマス丹波篠山)
事例発表②
「森林と廃校を資源に変える経営 ― 地域を動かすCSVモデルの実践」
(講演資料:日本語資料(PDF)英語資料(PDF)

足立龍男 代表
(FOREST GROUP)